ABKLOG

白髪混じりのブルーズ

2017年に購入した素晴らしい機材まとめ

指定席券を購入できたのは、渡りに船というか開いた口へ牡丹餅というか、とにかく思いがけない幸運だった。おかげで寒空のホームで列に並ぶことも無く、発車時刻寸前までコーヒーと煙草をゆっくりと楽しめたのだから、新幹線自由席への乗車を掛けたチキンレースから早々に降りることができたのは非常に大きい。確実に座席が用意されている、という人権の保証を受けたのは久しぶりのことだった。

新幹線といえば、2年半ほど前に広島に向かうために乗ったことがある。実家への帰省以外の理由で新幹線を利用するのはそれが初めてだった。地元へ向かう新幹線と違ったのは、車両のサイズもあるが、僕にとっての大きな違いは喫煙デッキが用意されていたことだ。てっきり新幹線の喫煙デッキなんてもうずっと昔に撤廃されたものだとばかり思っていたから、それはまさに青天の霹靂だった。東京から4時間という長時間の道程もそのおかげで乗り切れたようなものである。

そんなことを思い出すと、今現在のこの状況に不満はあるけれど、いくら募らせても仕方ない。何事もどこかで折り合いをつけることが肝要だ。

 

ところで、僕は本来の予定であれば、降車駅に着くまで本を読んで過ごすつもりでいた。東京駅のホームまで上がったところで、ちょうど読みかけていた本の最後のページをめくった。次巻を鞄から取り出そうとしたけれど、発車時刻が迫っていたので、そのまま列車に乗り込んだ。スーツケースを棚に上げて、席に座ると同時に列車は動き出す。鞄から本を取り出そうとすると、中には何も無かった。顔を見上げる。どうやらスーツケースの中に入れていたらしい。少し考えて、取り出すのも億劫だ、という判断。しかし、手持ち無沙汰になってしまっために、今こうして文章を書いているというわけである。

 

 

そういえば、僕が新幹線に乗車する少し前に、falleavesで共に活動している高野くんがブログを更新していた。

 さて、これから僕がやろうとしていることは、数時間前の彼の行動のトレースである。

彼は主にFILTER(彼がfalleavesとは別に活動しているバンドである)について言及しているから、僕はfalleavesについて書いてみようか、と思ったけれど、案外言葉は出てこないものだ。

何故かって、誤解を招く表現かもしれないけれど、僕はあまり音楽に対して情熱的ではない。これは周囲の音楽に携わっている人間と比較して、相対的に評価した結果である。

もちろん楽しくないわけではないし、やる気がないわけでもない。ただ、曲の良さがどうだとか、音楽性がどうだとか、活動スタンスがどうだとか、そういった方面にあまり興味が湧かないのだ。そもそも音楽に詳しくない。ともすれば、今バンドをやっていることだって、言い方を変えれば利害が一致しているからとも言える。

例えば、何らかの機材を導入するときは、曲をより良くしたい、或いは音を良くしたい等の理由が通常だ。このとき、曲をより良くしたいという目的を達成するために、機材を導入するという手段を用いるわけである。ところが、僕の場合はここが入れ替わってしまっている。僕の目的は自分が納得する音を出すことで、その手段としてバンドをやっている。どうやらバンドで出す音が好きらしい。

こうやって書き出して読んでみると、バンドをやる理由としては少々不純かもしれないし、音楽が心底好きな人から見たら気持ちの良いものでもないかもしれない。けれど、そんな奴もいるって割り切って許容してほしい。何事もどこかで折り合いをつけることが肝要なのだ。

 

前置きが大分長くなったけれど、僕が目的を達成するために(あるいは全くの趣味として)、2017年に購入した機材について、特に素晴らしかったものを紹介しようと思う。

 

1.Bogner Metropolis(ギターアンプ

 ハードオフにて購入。

12インチスピーカー一発のコンボタイプで、深緑のトーレックスに金色のシャーシ、小麦色したグリルクロスの見た目が最高のアンプ。

このアンプを初認識したのは確かネットモールで、2015年の6月くらいだった。

とにかく見た目がものすごく好みで、試奏してみたら音も素晴らしかった。VOX AC-30の系譜、と聞いたことがあったけど、それともまた違う感じがする(しかし、あまりAC-30で音を出したことはない)。15Wとは思えないくらい音も大きい。電源をONにすると点灯するグリーンのランプを見る度に幸せな気分になる。

このアンプの面白いところはSCHIZOっていう謎の5段階のロータリースイッチがあって、コンプレッション感とか倍音の感じを変更できる。結構キャラクターを変えることができて楽しい。

独特のコンプ感と音の押し出しの強さがあるので、あんまり爆音バンドじゃなければ音量も十分稼げるし、抜けも良い。

とは言えやはりヘッドルームが狭いので、歪み系のペダルを繋ぐときは音が潰れないように注意が必要。

あとは、何度も言うけど見た目。ギターとかアンプとか、目に付きやすい機材は、見た目が優れていることが一番大事だと僕は思っている。もちろん人それぞれの好みはあるけれど、見た目が格好良い方が弾いてて気分が良いのである。

 

2.EMINENCE tonker(ギターアンプ用スピーカー)

Bogner Metropolisの換装スピーカーとして購入。

元々はcelestionのgreen backが搭載されていたけれど、音を出してるとき、ギリギリっす!いっぱいいっぱいっす!ってなるのと、ピークがハイに寄りがちなのが気になっていた(この部分についてはギターの特性によるものもある)。改造するのも覚悟して、その道のプロに相談したら、「スピーカー換えるのが一番手っ取り早いよ」との返答が。どんなのがいいですかねぇ?なんて色々聞いて、tonkerを載せたら幸せになった。なので、前述のMetropolisの話は、tonkerを載せた上での話になる。

スピーカーでこんなに音が変わるのか……というのを身を以て体感した。スピーカーの世界、完全に沼である。

 

3.Guardian rising saddle(ジャズマスターブリッジサドル)

ジャズマスターっていうギターはとにかく弦落ちする。一曲弾き終わって6弦を見ると、弦は大抵サドルから外れている。

これはいかんなぁ、と思うけれど、マスタリーブリッジを付けると音が硬くなりすぎるし、テンションバーをかますとアームのかかり具合が変わるしで、途方に暮れていた。これはそんなときに見つけたサドルだ。純正のスパイラルネジのような形状ではなく、しっかり溝が掘られているので、普通に弾いてる分には弦落ちがなくなった。意図的に弦を外そうとしない限りは弦落ちはゼロと言っていい。

音は輪郭がくっきりするけど嫌な変わり方じゃないし、アームの操作感にも影響はない。イモネジがハンマー/スピア(イモネジの接地面が平べったいものと尖っているもの)の2種類あって、購入時にどっちも付いてくる。このイモネジでも結構音が変わる。僕はフェンダー系のシャープな音が好きなので専らスピア派だ。ハンマーは接地面が多いためか、太く力強い音になる印象。

 

4.iSP decimator II(ノイズリダクション)

音はいいんだけどノイズがなぁ……ってペダルがいくつかある。酷いときには何も弾いてないのに「ブーッ」と鳴りっぱなし。一度気になるともうずっと気になってしまうもので、いろいろ探した中でチョイスしたのがこれ。これがまた素晴らしくて、ツマミは一つだけってシンプルな操作感で自然にノイズだけを消してくれる。原音にはほぼ影響なし(設定にもよる、もしくはそう聞こえている僕の耳の精度が良くないのかも)。もう今はこれが無いと怖くてダメ。

 

5.mooer 006(プリアンプ)

今年に入ってから発売されたmooerのプリアンプシリーズの一つ。

僕は神田ジョンっていうギタリストが好きで、その人がTwitterでこのシリーズの試奏動画をアップロードしていたんだけど、その音がめちゃくちゃ良くて、自分でも試してみたらめちゃくちゃ良くて迷わず買った。安いし。聞くところによるとkemperとかと同じ手法でプロファイリングしてるらしい。

僕が買った006はfenderのblues deluxe(だっけ?)をモデリングしているらしく、クリーン/ドライブの2ch、スピーカーシミュレートのon/offをそれぞれ設定できる(これはシリーズ共通)。

JCのリターンに挿して音出したらビックリした。フェンダーのアンプじゃん、って思った。JCのインプットに直挿ししたときのようなカリカリ感は皆無。

僕はマイアンプを持ってるわけだけど、毎回持ち運べるわけでもないので、そういうときすごく便利。めっちゃ小さいからギグバッグにも余裕で入るしね。

 

6.fender twin reverb(ギターアンプ

僕、昔からアンプは現行のツインリバーブが一番良いってずっと言っていて、にも関わらず、似ても似つかぬアンプにばかり手を出していた。それはちょっと珍しい機材を使いたい、みたいな悪い癖によるものだ。その点で言うとツインリバーブなんてメジャー過ぎるので、ずっと候補から外していた。

しかし、ここ2年くらいでたくさんのアンプを触ってきて、やはりツインリバーブが最高だという結論に達した。そうなればもう一念発起である、買った。白いトーレックスに小麦色のグリルクロスでぱっと見はツインリバーブに見えないのも素晴らしい。ほぼ新品のものを買ったので、これからスピーカーをエイジングしたり、楽しみがたくさんある。

  

 

さて、書き終えたところで、ちょうど駅に列車が到着した。改札へと急ぐ乗客を横目にホームの喫煙所に入る。今年は雪が積もっている、と聞いていたけれど、ホームの上からは列車が邪魔して外の様子が窺えない。本当に積もっているのだろうか……それは実際に見てみないと分からない。

ちなみに、今回触れた機材についても写真はないから、説得力があまりない。僕は2017年は、いや、もっと前から写真を撮ることに抵抗を感じていた。それは菜食主義くらいくだらないポリシーによるものだ。しかしながら、もっと記録を残しても良いのではないか……と最近は思い始めている。あと数時間で今年は終わる。来年は積極的に写真を撮ることにチャレンジしてみよう。

煙草を吸い終わったところで、回送列車が車庫に向かって発進して行った。列車が隠していた線路を覗いてみると、そこには確かに雪が積もっていた。